このところTVのCMでAI機能を搭載したオーディオ機器の紹介が目につきます。今のところ音楽を流したり、簡単な会話が出来る程度のようですが、ごく近い将来には本格的なAI機能をもった製品が紹介されることでしょう。
家庭用電化製品(家電)と呼称されるように、私の子ども時代には、TVは一家に一台でした。電話も一台、ステレオも一台、クーラーも家族が揃う(就寝する)居室に一台という状態で、それが当たり前でした。
1970年代から家電から「個電」に移りました。TVもステレオも、クーラーさえも各部屋に一台、今や電話も固定電話から各人の携帯電話となりました。
その結果、家族団欒(だんらん)の時間が減少し、個人のウエートが増えました。家族全員が揃って観るようなTVドラマは消滅し、TV製作側も「25才から35才までの結婚願望がある女性が対象」とか「中高年で健康志向が強い世代」等のように、視聴する対象を細かく分類しています。
冒頭に紹介したAI製品も、モニター画面を併設すれば、「私だけが観たい」、「私だけが必要とする情報」映像だけを流すようになるでしょう(私ならホークスが勝った試合、逆転した場面だけを、延々と映させるかな)。

そうなると、個人はAIだけあれば生きて行ける、そんな時代が到来するかもしれませんし、その確率は高いものがあります。
私はこのような時代の到来を恐れています。何故なら、人は「人間」と書くように人と人の間でなければ、学ぶことも生きていくことも出来ないからです。

地上の動物で最も「強い」のは、オオカミとされています。1対1ならば分かりませんが、オオカミは集団を形成して狩りをします。どうやって意思疎通をするのか、連携して追いかける、先回りをする、正面から背後からと多彩な攻撃を得意としています。これにはライオンも熊も、象ですらお手上げということです。これは太古より「群れ」をなして生きて来たからこそ得た能力であり、知恵なのでしょう。
ここにAとBの二人がいます。その関係示す線は1本です。そこにCが加わると3本になりますが、大切なポイントはAにとって自分と直接関わりの無いBとCの関係実態を間近で見ることが出来ることです。これにあと二人加わりABCDEとなったら、この人間関係のラインは10本になり、10人ともなれば一挙に63本に増えます。

園児を考えて下さい。自分と先生とは1本のラインですが、「あの子は、こんなことして先生に叱られた」、「この子はあんなことして褒められた」とか、「X君とY君はこんなことでケンカしる(仲良しになっている)」というように無数の人間関係を観察し、時には自分自身がかかわりながら、学びを積み重ねていきます。これが「群れの学び」であり、個人とAIだけの関係では絶対に習得できないものです。
AIが苦手とするのは、人の感性や情緒ですが、それは本園が得意とするところです。