園長という幼稚園を代表する役目を務めると、人前で話を、それも自分の考えを述べる機会が数多くあります。
教職員の採用説明会、園児募集の入園説明会等では、「この幼稚園は、トップである私のこのような考え方が、その土台になっています」という話から始まります。
その考えとは「人はみな、喜ばれる為にこの世に生まれて来た」というものです。我が子が誕生した時を振り返れば、容易にご理解頂けると思います。赤ちゃんが生まれると、ご両親に、ご家族に大きな喜びをもたらします。すなわち、この世に生まれて来た目的、生きていく目的は「喜んでもらうこと」なのです。
また仕事をする、働く目的とは「相手(お客様)や、同僚に喜んでもらうこと」だと考えています。とすれば、生きる目的と、働く目的は、重なることになりませんか?と、特に採用説明会では学生さん達に語ります。
それに対して「私も同感です」という方に採用試験を受けて頂き、「いえ、働く目的はお金を得ることです」と考える方は、試験を辞退して頂きたいと考えています。
時おり、園児さんの保護者から「あかつき幼稚園の先生方は、経験の長短はあっても、みなさん同じ方に顔が向いていますね」と評して頂きますが、実はこのような理念や、価値観を全員で共有しているからこそ、新人教諭からベテランの先生まで、同じベクトルで勤務出来ているのだと思います。

さて、子どものことに話を戻しましょう。
人間の根幹には「be・do・haveの法則」がある、とされています。
「be」とは、存在そのものです。幼い我が子を見つめながら「将来、大学入試に落ちたら怒ってやろう」等と考える親はいません。何が出来なくても、ただそこにいるだけでも、愛(いと)おしく感じるものです。
「do」とは文字通り、行動です。ハイハイが出来るようになった、鉄棒が出来た、勉強をするようになった。そんな行動の一つひとつが「すごいね。お利口ね」と褒められる。
すると子どもは、「自分は愛されている」と実感出来る行動承認に意識が向いていき、やがて「良い行動がとれないと、親から愛してもらえない」という心理が芽生えます。
つまり「親(他者)から認められる人生こそ価値がある」と深く思うようになると、嫌われないための行動「do」を無意識にとり始め、「親(他者)から認められる自分」を「have」手にするようになるのです。

「ちょっと待って!」。こんな行動心理学みたいな話を聞くと、つい叫びたくなります。本来子どもは、「君はここに存在しているだけで素晴らしい」と思われるべきなのです。それなのに、評価される為の行動をしていないと不安で仕方なくなるというのは、不幸な生き方です。
私は親子関係の話を書いていますが、実は恋人同士や夫婦、職場での上司と部下の関係も一緒です。「あなたがいてくれて良かった」、「君がいるから幸せだ」という気持ちを機会あるごとに発して下さい。きっと良好な関係性が動き始めることでしょう。