四年に一度開催される世界的ヨットレースがあり、名称を「ヴァンデ・グローブ」といいます。フランスの大西洋岸のヴァンデ県レ・サーブル=ドロンヌの港を出発後、大西洋を南下して、南極大陸をぐるっと一周し、再び大西洋を北上、出発地点であるフランスの港に戻るというレースです。約5万キロの航路を約80日間、一人で一度も寄港せず(補給を受けず)ひたすら荒海を進むのです。
完走率は約五割。強風荒波に加えて、流氷やクジラとの衝突の危険性がつきまとう世界で最も過酷なレースとされています。
今回のレースは既に始まっており、11月6日に29艇が出航しました。その中に有色人種として歴史上初めて、日本の白石康次郎さんが参加しているのです。

十年近く前、私はある勉強会で白石さんと知り合いました。その時はもう三度も単独世界一周を成し遂げている「海洋冒険家」として有名な方でしたが、実に気さくなお人柄で、私にも大変親しくして下さいました。当時から「次の夢(目標)は、ヴァンデ・グローブに出場することです」と明言されていました。
しかし、世界的なヨットレースに参加するには膨大な資金が必要です。白石さんは大金持ちでも、巨大企業のスポンサーがついている訳でもありません。講演活動を行ったり、ヨットとは無関係なTVのバラエティ番組まで出演したりしながら、地道に資金集めに奔走されていました。
私も何がしかの支援になればと、ごく少額の後援会費を払ったり、一度は久留米市の私立幼稚園PTA研修会に、講師としてお招きしたりしました。
そのようなご縁がありますから、今回の白石さんのヴァンデ・グローブ参戦は、他人事とは思えず、毎日インターネットでレースの模様を「今日もご無事だろうか?」と、緊張感をもって観ています。

「夢は叶うよ」。私達は子ども達に向けて安易に口にします。でも、現実はそう簡単ではないことも知っています。
叶う夢と、叶わない夢。その違いは、個人一人だけの夢と、大勢の人のものとなった夢にあるように思います。私が「若くて美人の奥さんを貰い直して、彼女と世界一周旅行に行くのが夢だ」とか言っても、私の友人達は「ふ~ん」とは言っても、私の夢が叶うよう応援したり、協力したりする人は、誰一人いないでしょう。しかし、白石さんの夢は多くの人達が賛同し、応援をする夢となったからこそ、今回実現したのです。

ご存知のように日本は徳川時代に「鎖国」をしていた関係上、外洋を航行するための造船技術も、帆船技術も発達しませんでした。その間に西洋では「大航海時代」を迎え、世界の七つの海を各国の船が駆け巡ることとなります。その結果、外洋航海に関する彼我の差は大きなものとなり、それは現代にも及んでいます。その日本と西洋との「差」を、白石さんは一人で埋めようとしています。白石さんの夢は、「日本の夢」となったのです。(http://www.vendeeglobe.org)