ずっと以前、私が初めてのアメリカ旅行に行く際に、ある方から「サンキューと、アフターユー(After you)だけは、しっかり言いなさい」と、教えられたことがありました。アフターユーとは、「お先にどうぞ」という意味です。
かの国で、エレベーターで乗り合わせ、同じフロアで降りるような場合、この言葉を発すると、私の顔を見て「日本人なのに、よく知ってるな」的な表情と共にサンキューと言ってくれました。
英語オンチな私ですから、少しでも通じたり、コミュニケート出来ると嬉しいものです。また同時に、「よ~し、次に行く時までに英会話を勉強するぞ」と決心し、そのたびに叶わないのも、毎度のことなのですが・・・。

いつも申し上げることですが、「人は誰かに喜ばれるために、この世に生まれて来る」と、私は信じています。幼稚園で日々子ども達の姿を見ていると、それは間違いのない真実であるという確信へとなります。
子ども達が生まれた瞬間、どんなにかご両親、ご家族は喜んだことでしょう。幼い我が子の成長のプロセスの中で、初めてパパママと呼んでくれた、昨日まで出来なかったことが、今日は出来るようになった等と、ささやかなことですら、両親にとっては大きな喜びとなったことでしょう。

さて、このように子どもは存在するだけで、喜びを生み出すことが出来ますが、我々大人はどうでしょう。
人は誰でも(私も)自分が可愛く、一番大事な存在です。そのことを先ず自覚しておかないと、つい無意識に自己中心な考えや、行動をとってしまいます。それでは犬や猫と同じです。人間は本能を「圧縮」出来る唯一の動物なのです。その本能を圧縮して生まれた隙間に生まれるものが「理性」だと思います。
ある時、私は「誰かの迷惑になりはしないかと、常に考えられる人を『教養のある人』と呼ぶのだ」という話を伺いました。この場合の教養も、理性と同じ意味にとらえて良いかと思います。
昔から、親は子どもに「人様にご迷惑を掛けないように」ということを、口うるさく言ってきました。昔のことですから、高等な教育を受けた親は、殆どいなかったでしょう。しかし、最も教養のある教えを、子どもに与え続けていたのです。
どうかお願いですから、「人様にご迷惑を掛けないように」という尊い教えを守り続けて下さい。その上で、周囲の人から喜ばれる人になれるよう導いて下さい。
喜んでもらうために特別な才能や、能力は必要ありません。人は言葉でも喜ばせることが出来ます。表情や態度でも、喜んでもらうことが出来ます。
園児さん達が中央公園に出かけた時、すれ違うお年寄りに「こんにちは」と元気に挨拶するだけで、お年寄りから喜んでもらえます。コンビニで支払いの時に、園児が「ありがとうございます」と言ったら、店員さんが感激したということもあったそうです。人はみな、喜ばれるために生まれて来たのです。