親だったら、我が子は「いい子」になって欲しいと願うのは、当然なことです。いろいろな「いい子」の定義や、イメージがあるでしょうが、ごく自然に「ありがとう」、「ごめんなさい」が、スムーズに口から出る子は、間違いなく「いい子」の姿として、上位にランクインすると思います。 これは日常の挨拶と同様で、親が子どもの前で「ありがとう」や「ごめんなさい」を発している姿を見れば、自然と身に付くものと考えていました。が・・・

私の認識不足か、どうも現実はそうでもないと教えられました。先日、30~40代の女性をターゲットに書かれた本を読んだのですが、その中で「結婚向きのいい男の5つの条件」という項目があり、その一番目の条件が、「ありがとう・ごめんなさいが言える」とあったのです。その著者は、「いきなり五歳児レベルで申し訳ないのですが、これがちゃんと夫が言えていれば熟年離婚にならなかった夫婦、ごまんとおります」と、述べています。 この著者の言う通りだとすれば、世の中の夫婦間では「ありがとう・ごめんなさい」を頻繁に発していないことになり、そうであれば子どもが家庭内で耳にする可能性も低い、ということになりますね。これでは「自然と身に付く」わけがありません。

そこで、より良い夫婦関係を継続するため、子どものしつけのため、一人の人としてその人間性を高めるためにも「ありがとう一日30回運動」を提案します。お茶をついでくれたら「ありがとう」、荷物を持ってくれたら「ありがとう」と、夫婦間で相手が何かしてくれたら、即時その場で感謝の言葉を言うのです。いきなりご主人が「ありがとう」と言い出すと、奥様が「あなた、何か後ろめたいことでも」と勘繰る可能性もありますが、そんなことは気にしないでおきましょう。

一日30回は、意外と大変ですよ。職場でも同僚や部下に「ありがとう」、上司には「ありがとうございます」、コンビニで買い物をしたら、商品やおつりを受け取る時に「ありがとう」と言うようにします。 とにかく園長に騙されたと思って、一度やってみて下さい。続けていくうちに、あなたの周囲の雰囲気が変わります。

何故、こうも断言するかと申しますと、あかつき幼稚園で実証済みだからです。 もう十年以上前になるでしょうか、私は園の先生方に「お疲れ様禁止令」を出しました。アルバイトの経験からでしょうか、若い先生方は職場の人に、とにかく「お疲れ様です」と言えばいいと思い込んでいます。

例えば、朝一番に私に会った先生が「園長先生、お疲れ様です」(「そんな、朝から疲れてないよ」)と言うように。 確かに「お疲れ様」とは、美しい日本語であり、私も否定するものではありません。しかし、TPOを使い分けられないなら、言わない方がマシです。

お疲れ様が言えないなら、代わりに何と言うか?それが「ありがとうございます」なのです。結果として「ありがとうが溢れる幼稚園」になりました。時おり、あかつき幼稚園の先生方は、雰囲気が明るくて良いですね、とお褒めの言葉を頂きますが、その秘密はこんなところにあったのです。