ご入園ご進級、それぞれにおめでとうございます。今年もこのコラム欄を通して、保護者の皆様方に園長からのメッセージをお届けしますので、どうぞお付き合い下さい。

 

昨年一年間でご両親を亡くされたある先生が、このような話を聞かせてくれました。「出張先で両親におみやげを買うのが習慣になっていたけど、両親を失って『ああ、もう買う必要は無いのだ』と思った瞬間、親孝行とは、するものではなく、させてもらうものだった、ということが分かりました」。

私は24歳の時に父を亡くしましたので、それ以来、この世に一人しか残っていない親だから、と母親に対して親孝行の真似ごとのようなことをして参りました。その母も九十の半ばを過ぎ、現在は入院中なのですが、たまに見舞いに行くと「いっちょん、こんやったやんね」と叱られます。そのように息子を叱る元気があること自体が、有り難いと思いますし、いつまでたっても親は親、子は子なのだと改めて思わされます。

さて、先の「親孝行とは、させてもらうもの」というお話は、子育てにも通じることです。子育てが大変と感じる方は、「私が子育てをしている」と(当然ながら)思うものです。でも、ちょっと見方を変えてみましょう。子どもがいてくれるから「親」なのです。子どもがいなければ、子育てをしたくても出来ません。ですから、子育てとは「する」ものではなく、「させてもらっている」のです。そう考えると、子育てに追われるような毎日も、貴く掛け替えのないものに、いっそう思えるのではないでしょうか。

幼稚園も同じです。子ども達が毎日来てくれるから、幼稚園ができるのです。これから始まる一年も、登園してくる子ども達と、幼稚園を信任して送り出して下さる保護者の皆様方に感謝して、教育運営を行って参ります。

本園には園長以下「優秀な」先生は、一人もおりません。特別な教育も出来ません。その代わり、普通のこと、当たり前のことを全力で取り組む覚悟だけは、もっております。例えば、挨拶。朝、子ども達を迎える時は、最高の笑顔と、挨拶で迎えようとしておりますが、子ども達に対してだけではありません。

本園は公園に隣接しているせいもあって、朝の散歩をされる方が沢山いらっしゃいます。園児の登園前に先生方は、園内は元より周辺の道路の清掃も行っているのですが、そんな際に先生方は、散歩で通りがかる方々に元気な声で拶をします。そうしますと、相手の方も挨拶を返して下さいますし、中には「毎朝、幼稚園の先生の元気な声で、こっちも元気になる」とか、「先生達の挨拶を聞きたいので、散歩コースを(幼稚園の前の道に)変更した」等の嬉しい言葉を、頂くこともあります。今年も子ども達にも挨拶、ハイの返事、履物を揃える等の「当たり前」のことを大切に、そして徹底して伝えて参ります。