先日の東京出張の際、ファーストフード店に私が行った時の話です。昼食時で店内は、ほぼ満席でした。どこか空きそうな席はないかと、私がトレイを持ったまま探していますと、二人の学生風男子が席を立とうとしていました。しめたとばかりに近寄り、「ここ空きますか?」と私が尋ねると、「どうぞ」とすぐさま立ち上がり、席を譲ってくれました。ここまでは普通の話ですが、その後で一人の男子がテーブルに残った水滴(コールドドリンクの容器についた水滴)を、ペーパーでサッと拭いてから立ち去ったのです。
私は「丁寧に、ありがとう」と礼を述べましたが、その小さくも(しかし忘れがちな)爽やかな行為に、ひと時猛暑を忘れることが出来ました。

私が本園に勤務して三十年以上経ちます。どの時代も本園の先生方は、二十代女性独身者が大半を占めています。時々大学や、短大の幼児教育科の学生さん達に講義をしますが、学生の99%が女性です。そんな彼女達が、最も関心をもって私の話を聴いてくれるのが「いい男の見分け方」というテーマです。
結論から申しますと、自分より弱い立場の人にどういう態度で接しているかに注目する、ということです。具体的な例で説明しますと、高速道路(最近はETCのせいで、機会が減少しましたが)や、駐車場の料金所、あるいはコンビニの支払いの際に「ありがとう」と言って、相手の人に敬意を表すことが出来るか、どうか。「こっちはお金を払っているのだから」という態度をとるようでは、大した奴じゃないから考えなさい、と勧めています。
子どもを連れた母親が、水道工事をしている現場に通りかかったとします。一人の母親は「こんな仕事をしてくれるおじさんがいるから、毎日おいしいお水が飲めるのよ」と言いました。別の母親は「坊やもしっかり勉強しないと、大きくなってこんな仕事をしなくちゃならなくなりますよ」と言いました。さて、あなたはどちらのタイプでしょうか。
新園舎の工事期間中、園児達(特にバスや、徒歩コースで登降園する子ども達)は、路上で誘導してくれる警備員さんや、現場の方々に挨拶やお礼の言葉を、通りかかる度に口にしています。「僕達の安全を守ってくれて、ありがとう」、「私達のお部屋を作ってくれて、ありがとう」、そんな気持ちが込められているのです。
建築現場は教室ではありませんが、教室以上の教育の場になっているな、と思いました。出来ることなら、工事がずっと続けば良いのにとも思いましたが、そうはいきませんね。
このように子どもの教育や躾のチャンスは、幼稚園や学校の施設内にしかない、ということはありません。これから始まる二学期は行事や、園外に出掛ける機会の多い学期です。あらゆる場面でも、子ども達に学びや、気づきのチャンスとなるように心掛けて参ります。
今年(平成24年)の中秋の名月は9月30日(日)です。ご家庭でも日本の風習を守り、お供え物をして、お月見をしては如何ですか?