年長児の「あかつきノート」家庭からのお返事に、このようなコメントが寄せられていました。

「ある日、帰って来て『僕、漢字が書けるよ』と言って”九”の字を書きました。私が『漢字の九だね』と言うと、『その人の歌を歌うんだよ。どうして坂本九さんが亡くなったかママ知ってる?』と聞くので、『飛行機の事故でしょ』と答えると、山の上に落ちた事など詳しく話してくれました。
『二度とない人生だから』の時もそうでしたが、どういう人が、どのような思いで作ったものなのかを、先生からきちんと説明してもらって、それをしっかり受け止めているのだなと、益々発表会が楽しみになりました」

 子ども達は幼稚園で過ごす時間の中で、日々多くのものを吸収し、成長していきます。それはまるで乾いたスポンジが、きれいな水でも、汚れた水でも同じように吸い込む様子に似ています。だからこそ、幼児期には美しいもの、正しいものを精選して与えてあげたいものです。
でも私達の周囲には、子育てや教育に関しても、様々な情報が溢れています。○○をすると賢くなる、△△によって才能を伸ばす、○歳からでは遅すぎる、いやはや専門家である私でも目が回りそうです。
困った時、悩んだ時は「原理原則」に立ち帰れと言われています。分かり易く「原点」と言ってもいいでしょう。
私は原点とは「心」のことだと思います。頑張る心、我慢する心、応援する心(大人の言葉では「思いやりの心」のことです)の三つの心を一年間、子ども達に説いてきました。ただし、心は目に見えません。心が表出するのが、その子の「態度」です。頑張る態度、我慢する態度、思いやりのある態度、そのような園児の姿を目にするたびに嬉しく感じるのは、園長ばかりではないと思います。

さて、子ども達が社会の前線に立って活躍する2030年には、労働人口が現在の8300万人から6200万人に減少しているそうです。その時代に求められる人材とは、どんな人でしょうか。決められたことをする、言われたことをするような仕事は、機械か、ひょっとすると外国人労働者に占められているかもしれません。
私はその時代には、自分で考え、自分で行動し、自分で挑戦するような人が求められると思います。受験のテクニックにあるような「出来る問題からやりなさい」で育った人には厳しい時代でしょう。だって人生は出来ない問題や、難しい問題ばかり出るのですから。
大切なのは出来ない問題や、難しい問題でも「やってみよう」とする挑戦する勇気や、それに取り組むことが「楽しい」と思える心だと思います。

この一年も、子ども達に努力する姿、努力する貴さを見せ続けた「モデル」がいます。それは本園の先生達です。きっとその姿は、いつまでも子ども達の心に残り続け、思い出の中の先生は「頑張ってね、先生はいつもあなたを応援しているから」と、エールを送り続けてくれることでしょう。